天使な話3 |
「どういうことだ!?」
ザイスはテーブルをたたきつけながら叫んだ。
ここは軍の建物の一室で、今は休憩室として利用されている。
「何だあいつらは?杖もない、呪文も唱えない、自分の防御にも無頓着!おまけに空までお飛びになるってかい!!」
「落ち着いて、ザイス」
反してバールはザイスの向かいに座り、ゆっくりと話す。
「あれは『天使』なんじゃないかと思う。まだ、軍の正式発表はないけど。昔一つの王国を滅ぼしたって言う・・・・・・」
「それがどうしたって言うんだ!!あいつらは攻めてきたんだぜ!!オレ達の国に」
今日未明、彼らは突然河を越えてやってきた。隣国スイセキの不信な動きでマナ国は最近緊張しっぱなし、警戒しっぱなしだった。しかし、攻めてきた相手は、普通の敵ではなかった。
それは異常だった。
人が決して使うことができない手段、飛行。敵は河を飛んで越えてきたのだった。彼らの背には翼があった。
国境警備隊はすぐさま応援をよび、攻めてきた『天使』たちに応戦した。しかし彼らは空中から仕掛け、この上なく有利だ。こちらは建物の影から防御するので手一杯だ。
「バールは何人やった?」
「一人いるかいないかかな・・・・・・」
「オレも似たようなもんだ」
天使たちはちょっとした怪我ならすぐに治してしまう治癒能力も有しているようだった。中途半端な攻撃は効かない。仲間は次々と減っていくが、天使たちは一向に減った気がしない、
「戦えば戦うほど自分の怪我が増えていく。治癒魔法の大盤振る舞いだ」
「僕も似たようなものだよ」
二人は沈黙した。部屋が静かになる。窓の外の空には天使はいない。夕方近くになると一斉に引き上げて行ったのだ。空の色は濃い青色をしていた。
「オレたちはこの国を守るんだ・・・・・・マナ国の魔法使いの名にかけて、スイセキのわけのわからん生物に負けていられない」
ザイスの声が妙に響いた。バールは静かにうなずいた。
そして、この日から、マナ国とスイセキ国の戦争が始まり、ふたつの国の滅びの宴が始まった。
2006/06/26 第二版
2006/04/22 初版