サイト1 「北の時を知る人」になったわけ |
「タスク!」
「・・・・・・んあ?」
がさがさがさがさっ!!!
タスクと呼ばれる男が起き上がった瞬間に、雪崩が起きた。本の雪崩だ。
「ぐがっ!」
「・・・・・・あんたってやつは・・・・・・毎日何回雪崩を起こせば気が済むの?」
呼びに来た女性ははあー、と、大げさにため息をついた。
「タスク、師匠が呼んでるよ。なんか話があるみたい」
「う、うぐっ!」
雪崩の中からタスクの右手がにょきっと現れる。
「サコさん・・・・・・雪崩の中から俺は脱出したいのですよ・・・・・・」
「そう。早く来てね」
サコはそういってタスクには見えてないだろうが手をひらひらと振って部屋を出た。
「がふう・・・・・・」
ざがざがざがざが・・・・・・
雪崩は流れ続け、ついにその場所にタスクが光臨した。
「ぐへっ・・・・・・」
タスクは口にくわえていたペンを左手に持ちなおした。
「えーっと、師匠が呼んでるってか?」
ペンを崩れていない本の山の上にぺいっと置き、んーーーっと伸びをする。
「師匠が、俺を・・・・・・」
ふと、タスクは遠い目をした。
「来たか、な」
そして本の山々を巨人よろしくまたぎこし、ドアの外へ出て行った。
「待ってたよ」
にこにこと笑って師匠はタスクを迎え入れた。
「で、単刀直入にいうよ」
「断る」
「っがーーーん」
聞く前に断られる。師匠は大きな影を背負って床に手をついた。
「わたしは・・・・・・タスクを・・・・・・そんなような子に育てた覚えはありません!!」
「じゃな、師匠。俺は忙しいから」
「待ちやがれっ!タスク!!」
師匠はがばーっと起き上がり、ガシッとタスクの首に抱きついた。タスクの首に、師匠の体重がかかる。
「ぐげえーーー」
急に首を絞められ、たまったもんじゃない。タスクは図らずも、奇声を発した。
「この首から手を離してほしければ、わたしの願いを聞いてくれ!」
「ぐ・・・・・・」
「よし。了解したな。了解の合図だととるぞ。では明日からお前は第34代・・・だったかな、35代だったかな。忘れたが、まあ、新しい『北の時を知る人』だっ!」
そして首から手が離れた。
べちっ
重力により、師匠は床に思いっきり倒れこんだ(顔面激突)。同時にタスクも床に手をついてぜいぜい息を吸ったりはいたりする。
「し、師匠・・・・・・なんでそんなことを・・・・・・」
ようやく息が落ち着いてから、タスクは呟いた。
「何で、俺なんだ?」
「ノリ」
師匠は顔面をなでつつ(特に鼻)きっぱりといった。
「・・・・・・はあ?」
タスクは思わず聞き返す。
「だから、ノリ。わたしの言葉が信じられないのか?」
師匠はにっこりと笑った。
「ノリって、ノリだろ?ノリはノリにしかならない。つまりノリってことは・・・」
「お前が一番、この場所を任せられると思ったんだよ。」
「・・・・・・師匠」
師匠は急にまじめな顔で言い切った。
「わたしももう年だ。ちょっと早いが引退しようと思っている。わかってくれるな?」
「・・・・・・でも」
「これを」
師匠は笑って、首から下げていたペンダントをタスクの首にかけた。それには『北の時を知る人』門下のしるしがデザインされていた。
「これって、師匠!」
「これをもったものは国王の任命前でも『北の時を知る人』を名乗ることができる(かもしれない)」
「てきとーっ!!!」
「じゃ、わたしは彼氏とバカンス行ってくるから!きゃぴ☆」
「えぇええ?!」
「っというわけで、俺は第36代『北の時を知る人』になったんだっ」
「うっそだー!!」
「なんだ!信じてくれないのか?」
「アタリマエだろっ!!!」
「ヨモギもまだまだ子供だなぁ」
「(それは関係ない)・・・・・・」
2006年6月26日 第二版
2006年4月7日初版